sobayanoyutoの蕎麦道楽日記

大好きな蕎麦で遊んでいます

蕎麦道楽日記~桜そばを打ちました

 3月下旬のここ数日は雨模様で気温が上がらず桜の開花が各種の予想を裏切って遅れているようです。遅いといったところで,桜が暦を気にしているわけもなく,待っていればそのうち咲いてくれるだろうとは思うのですが,人間の狭量さゆえか,お花見などの行事日程が決まっていれば気の揉めることではあります。
 そば打ちを趣味とする小生としては,一足早く桜そばでも打って桜の開花を先取りしてみようと思い,年明けにやってしまったギックリ腰の影響でご無沙汰していたそば打ちを再開する気になりました。

桜そばです やや薄い桜色がきれいですね 桜の香りとほのかな甘みがあります

 桜そばは「変わりそば」の一つで,更科粉(御膳粉)という蕎麦の実の中心部分の白い蕎麦粉を使いますが,原則として二八の湯練りです。熱湯です。今回は更科粉1000㌘,つなぎ250㌘,さくらパウダー30㌘,加水というか加湯60%で打ちました。最近は「桜パウダー」なる便利なものが容易に手に入るようにましたが,のど越しのよい美しいやや控えめの桜色の鮮やかな桜そばを目指しました。

 色々な打ち方がありますが,小生の場合は,水回し(「湯回し」とでも言うべきでしょうか)をしてパウダーとつなぎを混ぜ,練って荒く玉にしたものをビニール袋で少し休憩させ,さらに練ったものを玉にします。

 その後,やや薄めに延したものを畳んで切ります。

思ったよりも延しが甘くなってしまいました。( ;∀;)

 切り上がりです。久し振りに打った割には自己満足できる桜そばになりました。




 

アルモンデそば(№30)~ぶり大根そば

 そば打ちを趣味としている小生の家の冷凍庫には,打った日に食べきれなかったそばの冷凍が常に保存されていますが,家人からは何とかせよとの厳命を受けることもしばしばあり,そうなりますと,小生の在宅時の昼食はほとんど冷凍したそばを食することになります。そのため,冷凍手打ちそばを何とか美味しく食べようと,その時に家に「あるもんで」いろいろと手を変え品を変え努力することとなりますが,もちろん冷凍とはいえ手打ちそばですから主役はあくまでそばであり,できるだけそばの風味を生かしつつ,何とか美味しいそばを食すべく考えたそばメニューを「アルモンデそば」のカテゴリーでこのブログに日記風に書いています。

№30 ぶり大根そば

 

一昨日から冷蔵庫にあったブリ大根,煮汁を混ぜたかけ汁が美味でした。


 お昼前になり,例によって,その時に「あるもんで」そばでも食べようと冷蔵庫を覗きますと,これといった物も見当たらず,「ハイカラそば(天かすをのせたもの)」か「たぬき(関西ではきつねうどんのそば版)」にでもしようかと思った矢先,一昨日に食べた「ぶり大根」の残りが冷蔵庫の奥の方にあるのを見つけました。
 これをそばのかけ汁に煮汁ごと入れて1,2二分温めてやれば,ぶり大根の風味の香るかけ汁になるだろうと思い,何とも安直ではありますが,早速,準備にかかりました。
 冷凍手打ちそばの方は,一週間程前に,福井大野産早刈りのそば粉十割で打ったものの冷凍です。
 鰹節と昆布で出汁を取って関西風に薄口醤油等でやや薄めに味をつけ,ぶり大根を煮汁ごと加え,魚臭さを和らげるため酒を少し入れ,サッと煮て味を見てみますと,ぶり大根のコクがいい仕事をしてくれています。そばにこのかけ汁を合わせてねぎの小口切りを散らし七味を振って出来上がりです。
 そばが10割なので伸びやすいため早々に口を付けましたが,ぶり大根の大根がそばつゆで軽く煮た効果でしょうか,熱々でとろとろの食感で,そばもしっかりとしており美味しくいただきました。

 年明け早々,久し振りにぎっくり腰を発症してしまい,2か月近くそばを打つ気になれずにいましたが,3月の声を聞いてやっと重い腰を上げたという感じです。そば打ちは全身運動でとりわけ手を動かします。メニューを考えるのも(今回は安直過ぎましたが...)頭の体操になりますし,いわゆるフレイル予防のためにも「アルモンデそば」を続けていきたいと思っています。
 

おそば屋さん食べ歩き(№15)~虎ノ門で江戸砂場そばの伝統をつなぐ老舗

    蕎麦で遊んでいます。今回は「おそば屋さん食べ歩き」です。
 小生が食べ歩いたおそば屋さんの中のお気に入りです。小生は趣味でそばを打ちますので,どうしてもそばそのものや汁に関心が向かってしまい,天ぷらや鴨などの種物,お酒やアテなどの料理ものについてはあまり紹介できないかもしれませんがご容赦の程。また,内容はすべて訪問した当時のものであり,現在も変わりないかどうかはその都度確認していませんので悪しからず。また,久し振りに書きましたので嬉しくなって長文になってしまいました。ご容赦を。

№15 虎ノ門大阪屋砂場(東京都港区) 2024.2.20訪問

築100年の歴史を刻む国登録有形文化財の店舗。夕闇に暖かな明かりが浮かび上がります。

 いつものことながら,蕎麦道楽人としては,せっかく東京に行くのでその機会にいわゆる老舗といわれているおそばさんに行ってみたいというお上りさん的な動機によりお店を選んでおり,こちらも典型的ないわゆる「江戸流」のお店です。これからも東京方面に行く機会があれば他の老舗にも行ってみたいと思っています。
 東京メトロ虎ノ門駅から徒歩で3分,虎ノ門ヒルズビジネスタワーと交差点を挟んで,ビル群の中でそこだけ時間が止まっているような,それでいて違和感のない,時を経て濃い飴色にようないい色になっている板張りの外壁と屋根に千鳥破風(上の写真では屋根上部を撮り損ないました。)を飾った2階建ての存在感溢れる歴史的建物が目に入ります。入り口は硝子の入った木の格子戸で,焦げ茶色の暖簾がかかり,上には「砂場」と大書された扁額様の木製看板が掲げられています。
 1923年(大正12年)建築で戦災を免れたとのことですから約百年を経過していることになります。2021年に店前の道路拡張に伴い曳家工法で数メートル移動したとのことですがもはや街のランドマークと言ってもいい建物だと感じました。

 「虎ノ門大阪屋砂場」は更科系や藪系とともにいわゆる江戸三大蕎麦の一つである砂場系の老舗で御承知の方も多いと思います。お店の成立や屋号に関する諸々は長文を要しますので割愛しますが,そのお店の歴史や屋号などもそばの味に影響する要素であることも否めませんので,極々簡単に触れておきますと,砂場系の起源は大阪城の築城資材置き場であった「砂場」にあった蕎麦店が江戸に進出してきたものとされており,1872年(明治5年)に、砂場本家「糀谷七丁目砂場藤吉」の暖簾分けにより、「虎ノ門大坂屋砂場」の歴史が始まり,現在は6代目になるとのことですから老舗中の老舗であることは間違いありません。

 ちなみに,小生は大阪府在住ですが,大阪市西区新町に新町南公園というさして大きくもない目立たない公園があり行ったことがありますが,その公園の一角に「ここに砂場ありき」と刻まれたさほど古いとは思えない石碑があり,「本邦麺類店発祥の地」と刻まれてはいるものの「蕎麦店」とは書かれておらず,周りにもそれを感じさせるような史跡等もなく,残念ながら,砂場系そばの発祥地としての雰囲気はあまり感じられません。

 お店に伺ったのは,2月中旬,最高気温が20℃を上回ろうかという季節外れの暖かい日の夕方,午後6時を少し回ったころでしたが,外待ち客はおらず,温かい明かりに誘われるように入口の格子戸をカラカラと引いて中に入りますと,すぐ左手に2階に上がる階段があり,1階はやや広めのスペースに昔ながらの茶色系の木製のテーブルと椅子が整然と並び5~6割ぐらいの入りでしょうか,ほとんどが4人掛けのテーブルのようで8台程度はありそうでしたし2人掛けテーブルも少しあるようでした。小生はスタッフの若い男性に案内されて4人掛けのテーブル席に一人座りました。木製のテーブルや椅子や内部の設えなどは特に老舗感や高級感を感じさせるものではなくむしろ古いながらも現役感の方が強い感じでした。

 小生のそば屋さん巡りはお昼時が多く,そばを中心にあわただしく2,3種類いただくことが通例なのですが,今回は夕刻で時間的余裕もありましたので,珍しくアルコールを少し頂戴しようかと思い,メニューを見ますと,これがなかなかの充実ぶりです。

 

卵焼きです。いい色です。しっかりとした食感でやや甘めでしたがくせになります。

鶏皮の三杯酢,そば焼酎「木火土金水」,湯桶に入ったお湯です

 お酒さん顔負けの日本酒や焼酎の希少ものや高級酒がずらずらと並んでおり,ありがたいことに一杯から飲めるものがほとんどでした。小生などは聞いたことしかないような銘柄も多くありました。その中から「木火土金水(もっかどこんすい)」という山梨県そば焼酎を湯割りでお願いしました。初めて頂いた銘柄でしたがすっきりと上品な感じでなかなか美味しく飲めました。アテ(関西では肴やつまみを「(酒の)アテ」ということが多い。)はおそば屋さん定番の「卵焼き(夜のみのメニューでなおかつ混雑時は受けられないという注意書きがありました!。)」とやや暖かい日でしたのでさっぱりしたものをと「鶏皮の三杯酢(これも混雑時は受けられないと書かれていました!。)」をお願いしました。卵焼きは丁寧な仕事ぶりがよく分かりましたし,鶏皮の方は酸っぱ過ぎず歯応えも抜群でどちらもお酒のアテとしては好適でした。

「もりそば」です。右下の空いている空間に箸をセットして撮るのを失念しました。

写真を撮る都合で移動させたためざるの目が縦になってしまいました,悪しからず。

 焼酎を楽しみながらおそばのメニューを眺めますと,冷たいそばとしては,「もりそば」のほかに10種ほどが並び,中でも「鉄火味噌そば」,「おろしそば(卵黄入り)」,「茗荷そば」などは姿や中身が気になるところで一度は食べてみたいと思いました。さらには,「各種天せいろ」として「芝海老のかき揚げ天せいろ」など5種類ほどが贅沢に並び,さすがにいわゆる「天ざる」が砂場系の店が発祥とされているだけのことはあるなあと思いました。なお,メニューには「冷たい召し上がり物」と書かれていました。「召し上がり物」とは書かれておらず,昭和生まれとしては好感を覚えたことを付け加えます。
 「もりそば」は使い込まれた感じの黒天朱というのでしょうか外側が黒く天と中が朱色の正角型のそばざるに平らに盛られていました。そばは薄緑色がかすかに残る透明感のある薄茶系の色味で,しっとりとしてつややかに輝き,細からず太からず,ホシは見えません。盛られているざるの目の狭さが少し気になりましたが,水切りがしっかりとなされているようでざるに水気が残るようなことはありませんでしたし,もちろん,ざるの目の間に短いそばが入り込んでしまい出てこないなんてこともありませんでした。
 そばつゆはどちらかというと軽い感じでしたが,醤油感と甘みが後を引くように思いました。このつゆでそばをいただくと,細すぎないそばが引き立てられているように思いました。
 そばの食感はしっかりとしていてむしろやや噛まねばならず,すすり込んで一噛み,二噛みでみで喉に送り込むようなそばではなく,盛られているそばの量がやや多いのと相まって,お酒を飲みながらも食事をする感覚で美味しくいただきました。江戸期のそばの食べ方としては,御承知のように,「三箸半」や「喉で食べる」などがよく言われていたようですが,このお店のそばはしっかりと食事ができるそばのように感じました。

「桜えび天せいろ」です,そば猪口が使われていません。

 次に,せっかく「天ざる」の発祥とされる砂場系の老舗に伺いましたので,「天せいろ」の中から何か一つということで,天せいろ群のメニューの一番右端にのっていた「芝海老のかき揚げ天せいろ」をお願いしようとしました。小生の後ろの席の常連と思しき中年男性客と店のスタッフの方との間で,「この店に来たらやはり芝海老のかき揚げ天せいろは外せない」という趣旨の会話をしているのを耳に挟んだせいもあり食指が動いたのですが,スタッフの方から,無情にも「本日は終わりました」の声が返ってきました。そこで,お願いしたのが「桜えびの天せいろ」です。こちらは,桜えびのかき揚げと黒天朱の長角そばざるに平らに盛られたそばと共に提供されましたが,典型的なスタイルのそば猪口は使われておらず,やや深さのある小さめの丸皿が付いていました。桜えびのかき揚げはかき揚げ用の金属の丸筒を使って揚げられたものだろうと思いますが,その大きさは見た目のインパクトは十分ではあったものの,どう食べるんだと一瞬逡巡するほどでした。箸を入れてみるとバリッと割れ散る硬さで,中には桜えびや三つ葉でしょうか緑色も見えました。丸皿にそばつゆを少し入れて,割れ散ったかき揚げを浸して食べ,合間にそばを啜ることを繰り返しましたが,かき揚げの衣に硬さとともに少しだけ苦みを感じ重く感じる部分もあり,やや揚げ過ぎではなかろうかとの感もよぎりました。これだけ直径が大きいと中まで熱を通すのに時間がかかるんだろうな,などと思いながら,カラリと揚がった大葉の食感を楽しみつつ,最後にそば湯を頂いて油をすっきり流して終わりにしました。

 

(お店のデータ)

・所在地等 東京都港区虎ノ門1丁目10-6 ℡ 03-3501-9661

・営業時間等 月,火11:00~20:00  水,木,金11:00~21:30 土11:00~14:00ころ

       定休日 日曜日,第三土曜日,祝日    

・席数 80席程度かと思います 

・交通 虎ノ門駅1番出口より徒歩3分/新橋駅日比谷改札より徒歩8分/霞ヶ関駅C2C3出口より徒歩5分

 



 

おそば屋さん食べ歩き(№14)~上野で江戸藪蕎麦の伝統をつなぐ老舗

    蕎麦で遊んでいます。今回は「おそば屋さん食べ歩き」です。
 小生が食べ歩いたおそば屋さんの中のお気に入りです。小生は趣味でそばを打ちますので,どうしてもそばそのものや汁に関心が向かってしまい,天ぷらや鴨などの種物,お酒やアテなどの料理についてはあまり紹介できないかもしれませんがご容赦の程。また,内容はすべて訪問した当時のものであり,現在も変わりないかどうかはその都度確認していませんので悪しからず。

№14 上野藪そば(東京都台東区上野)

上野藪蕎麦の外観です。賑やかな街の一角にあることが分かります。2024.1.16訪問

 今回の「おそば屋さん食べ歩き」は,東京に行った際に伺った老舗といわれるおそばさんの中の1軒で,「上野藪そば」です。前々回の上京時に伺った「№9 神田やぶ蕎麦」と同じく藪系の老舗です。
 いつものことながら,蕎麦道楽人としては,せっかく東京に行くのでその機会にいわゆる老舗といわれているおそばさんに行ってみたいというお上りさん的な動機によりお店を選んでおり,こちらも典型的ないわゆる「江戸流」のお店です。これからも東京方面に行く機会があれば他の老舗にも行ってみたいと思っています。

真ん中の三角形の帽子を被ったアーチ門が「上野御徒町商店街」のものです

 JR線などの上野駅広小路口から出て直ぐの横断歩道を渡り,大きな「上野御徒町商店街」のアーチ門をくぐり,アメ横に通じる道の両側に多くの各種店舗が並び人通りも多いそれほど広くはない通りを1,2分歩くと,角地に濃い藍色の「やぶそば」の暖簾が目に入ります。
 藪蕎麦系の老舗であり,行ったことのある方やご存知の方も多いと思います。お店の成立や屋号に関する諸々は長文を要しますので割愛しますが,そのお店の歴史や屋号などもそばの味に影響する要素であることも否めませんので,極々簡単に触れます。
 「上野藪そば」は,いわゆる「藪蕎麦御三家」としては名前は上がっていませんが,御三家の「神田やぶそば」の前身である「連雀町藪蕎麦」から1892年(明治25年)にのれん分けされたお店で,130年余に渡り伝統を継承しているとのことで,現在は4代目になるそうですが,まぎれもなく「江戸藪そば」の伝統を継承する老舗に違いありません。
 もっとも,建物の外観といい,立地している土地柄といい,どちらかと言えば,老舗感よりも現役感の方が強く,賑やかな街のおそば屋さんとして溶け込んでいるように思いました。

ガラスに囲まれたそば打ち部屋,周りにカウンター席があります。

 伺ったのは,1月中旬,風が強く寒い日で,昼時をやや回った午後1時30分ころでしたが,先客が1組入り口前に寒そうに佇んでいました。それほど待つこともなく先客が招き入れられましたので続いて店内に入り,お店の方に一人である旨を告げますと,カウンター席を案内されました。1階店内はほぼ満席のようでした。
 お店は,内装やテーブルなどに特に老舗感や高級感がたっぷり漂っているというわけではなく,現役感の方が強く感じられました。それほど広いとは言えないフロアに4人掛けテーブル席がバランスよく6台位配置され,さらに朱塗りのカウンター席が6席程度でしょうか,30人以上は入れそうでしたが,後でトイレに行くために2階に上がったところ,1階よりも席数の多そうなフロアが広がっており半個室や小座敷席などもあるようでした。
 驚いたのは上の写真にあるとおり,1階のカウンター席に囲まれたガラス越しのそば打ち部屋です。小生も結構な数のおそば屋さんに伺っていますが,そば打ちスペースを取り囲むようにカウンター席が配置されているお店はあまりありません。
 当日はそばを打っている様子は見られませんでしたが,使い込まれた練り鉢や打ち台などが雰囲気を伝えていました。こんな間近で江戸そばの老舗のそば打ちが見られた人は幸せだろうなと思うと同時に,お店の側もごまかしがきかないわけで,それはそれで大変だろうなとも思いました。

「せいろう」です。自然な薄緑色が美しい。

 カウンター席に座って,メニューを眺めますと,冷たいそばとして,「せいろう」とそのアレンジとして「のりかけ」など4種類ほどが並び,温かいそばとして「かけ」にそのアレンジとして「花巻」など7種類ほどが並んでいました。「きつね」もありましたが,大阪などではそばに揚げですから「たぬき」というところです。さらには,うどん,きしめん,ご飯ものが並び,天ぷら類,各種ヌキ,一品料理や酒肴なども豊富に並んでいました。奥の席ではややお年を召した男性たちがお酒を楽しまれているようでした。老舗でありながら肩の張らない普段遣いのできるお店の雰囲気でした。

「せいろう」です 真ん中がやや高く盛られています

 まずは藪蕎麦の定番「せいろう」をお願いし,同時に写真を撮る許可もいただきました。「せいろ」ではなく「せいろう」と「う」を末尾に付けます。「神田やぶそば」ではスタッフの女性が帳場に注文を通す際に,「せいろう~いちまい~」と語尾を謡うように伸ばしていましたが,このお店ではそこまでではありませんでした。
 5分ほどで「せいろう」が提供されました。薄緑色でやや細切りの見るからに角の立ったそばが,「井桁そばざる」というのでしょうか,上野藪の名前入りの黒光りのする角型のそばざるにやや中高に盛られていました。同じくお店の名前入りの小さめのそば徳利,趣味のいいそば猪口,箸袋などが,大きからず小さからず,濃い茶色の木の角盆にきちんと配置されていました。
 そばは表面がしっりとしてつややかに輝き,ホシはほとんど見えません。真ん中のそばが最後に盛られているのか少しだけ山高になっています。2,3本箸でつまんで口中に啜ってやりますと,強くはありませんがそばの香りが分かります。歯で噛みますとフツリと切れ,歯ぬかりなどは全くなくそばの肌が内頬をかすめて気持ちよく喉に落ちていきます。
 そば徳利に少量入っていた藪蕎麦系の特徴でもある濃い目のそばつゆはやや甘さを感じましたが醤油感と鰹出汁感のバランスが取れているように思われ,そばとの相性はよく美味しくいただきました。「そば湯」は金属製の小さなやかんで提供されましたが,流行りのそば粉を溶いたドロッとしたタイプではなく小生の好むサラッとしたタイプで,そばつゆと合わせてこれも美味しくいただきました。この店のそばはいわゆる二八だそうですが,スタッフは忙しそうに動き回っており,そば粉の産地などは伺いませんでした。

「かき南蛮」です 大ぶりの牡蠣が目を引きます

 さて,次に温かいそばとして何をお願いしようかと悩みましたが,メニューのトップにのっていた「季節限定メニュー かき南ばん」に惹かれてしまいました。おそば屋さんの温かいかけそば用のつゆを味わうためには「かけそば」などの蕎麦以外の具がつゆの味に大きな影響を与えないものがいいのですが,掲載されていた写真の牡蠣の大きさに気持ちが傾き,冬の今しか食べられないからなと言い訳をして「かき南ばん」をお願いしました。
 こちらはやや待ちましたが,提供された「かき南ばん」が上の写真です。牡蠣の大きさは掲載されていた写真のとおり大ぶりで,南蛮(ねぎ)は白ねぎを長めに切って縦割りしたもの,つゆは透明感のあるつゆで醤油感が抑えられており,牡蠣の出汁がよく分かりましたし,つゆもほとんど飲み干してしまいました。そばは「せいろう」のそばと同じものだと思われました。
 「神田やぶそば」でも「かきそば」を食しましたが,「上野藪そば」の方が牡蠣は大ぶりで食べ応えがありました(個数は「神田やぶそば」の方が多かったと思います。)。その他にも,違いとしてはつゆの色味や醤油感の濃さや「南蛮」かどうかという点で,「神田」の方は具としてワカメが入っており,「上野」の方は南蛮(,ねぎ)が入っているところでしょうか。好みの分かれるところでしょうが,小生としては「上野」派です。

 「かき南ばん」のつゆをほとんど飲み干して暖まったところで,次回は,お酒を少し頂きながら,「ヌキ」や一品料理を食してみたいと思いながらお店を後にしました。

 

(お店のデータ)

・所在地等 東京都台東区上野6丁目9−16 ℡ 03-3831-4728

・営業時間等 平日【昼の部】11:30~15:00
         【夜の部】17:30〜21:00

        土日祝 11:30~21:00 土日祝日は通し営業

        定休日 水曜日,第2・4火曜日(早仕舞などはお店のHPを参照)

        

・席数 80席程度かと思います 

・交通 JR 上野駅 上野広小路口  地下鉄 銀座線•日比谷線 上野駅から徒歩3分
    丸井 裏手斜め向かい

 

 

 

アルモンデそば(№29)~柚子切りの揚げカレーそば

 そば打ちを趣味としている小生の家の冷凍庫には,打った日に食べきれなかったそばの冷凍が常に保存されていますが,家人からは何とかせよとの厳命を受けることもしばしばあり,そうなりますと,小生の在宅時の昼食はほとんど冷凍したそばを食することになります。そのため,冷凍手打ちそばを何とか美味しく食べようと,その時に家に「あるもんで」いろいろと手を変え品を変え努力することとなりますが,もちろん冷凍とはいえ手打ちそばですから主役はあくまでそばであり,できるだけそばの風味を生かしつつ,何とか美味しいそばを食すべく考えたそばメニューを「アルモンデそば」のカテゴリーでこのブログに日記風に書いています。

№29 柚子切りの揚げカレーそば

そばは昨年大晦日に打った柚子切りの冷凍でやや太めのものです。

 およそ45年ほど前,社会人1年生になった小生のこの寒い時期の昼御飯(いわゆるサラメシですね。)の楽しにしていたメニューに,勤務先の近くにあったうどん屋さんの「揚げカレーうどん」というものがありました。カレーうどんの具の「肉」を「薄揚げ」に代えたものなのですが,これが何とも美味しく,出汁の効いたカレー汁を吸った油揚げ(大阪などでは「お」と「さん」をつけて「お揚げさん」といいますが。)を噛んだ時に,口中にジュワッと広がる甘めで辛さほどほどの鰹節の効いたカレー出汁と油揚げのわずかな油の風味が相まってしばしの幸福感に浸り,うどんを食べ終わった後,とろみのついているカレー出汁に白いご飯をぶち込んでもう一度幸福感を味わい,体も心も温まって午後からの仕事の活力をもらった記憶があります。
 食べ物の味の記憶は大変強いもので,40年前の記憶でも舌が忘れていませんので,今回の「アルモンデそば」はこの味を出来るだけ再現してみようと思い立ちました。

 とはいえ,もうお昼前ですので,簡単に済まそうと,まずは,ベースの鰹出汁をやや濃い目に取って,これに決め手の自家製のそばつゆをやや薄めに入れて,さらにフレークタイプのカレー粉末を入れ,最後に片栗粉でとろみをつけます,具はねぎと軽く焼いた(上の写真では分かりにくいですが)薄揚げです。
 これとそばを合わせればいいのですが,若干の変化が欲しいと思い,そばを柚子切りにしてみました。柚子切りは年末にお正月用にと打ったもので後は例によって冷凍していたものですが,冷凍後の弱くなった柚子の香りがカレーに負けるかなと思いつつも,まあ面白いかもなあとやってみました。ただ,柚子切りの麺の繊細な色味は分からなくなりますのでやはり若干の無理はあります。

 食してみますと,意外に柚子の香りもよく分かり,カレーの香りの邪魔になることもなく,むしろ美味しく食べられました。締めに白ご飯をぶち込んで幸福感を味わったことは言うまでもありません。

 

 一日に能登半島で発生した巨大地震の壊滅的な人的・物的被害や被災者の避難生活のことが連日マスコミで報道されており,今後の出来るだけ早い復興や平穏な日常の回復を祈らずにはおられません。小生もわずかながら支援金の寄付をさせてもらいました。

 地震の被災者の方々とは比べるべくもありませんが,小生もここ2,3年忘れていたぎっくり腰を発症してしまい,動きにくい日々を送っています。年末に購入したそば粉が冷蔵庫で打たれるのを待ってくれています。早くそば打ちを再開したいなあと思っています。
 

 

アルモンデそば(№28)~卵とろろの山かけ

 そば打ちを趣味としている小生の家の冷凍庫には,打った日に食べきれなかったそばの冷凍が常に保存されていますが,家人からは何とかせよとの厳命を受けることもしばしばあり,そうなりますと,小生の在宅時の昼食はほとんど冷凍したそばを食することになります。そのため,冷凍手打ちそばを何とか美味しく食べようと,その時に家に「あるもんで」いろいろと手を変え品を変え努力することとなりますが,もちろん冷凍とはいえ手打ちそばですから主役はあくまでそばであり,できるだけそばの風味を生かしつつ,何とか美味しいそばを食すべく考えたそばメニューを「アルモンデそば」のカテゴリーでこのブログに日記風に書いています。

№28 卵とろろの山かけ

「とろろ」が多すぎたかもです。体が温まりました。

 本年の「アルモンデそば」一回目は,冬の定番の「山かけそば」にして温まろうと思い,昨年末にスーパーで偶々見つけた「山の芋」を食べずに置いていたもので作ろうと考えました。
 そのまま普通の山かけにしてもよかったのですが,少し変化を付けたいと思い,すり下ろしたとろろに卵黄と自家製のそばつゆを混ぜてさらにすり合わせて,やや黄色味がかったとろろを,やや太めに切ったそば(例によって冷凍した手打ちです。)にかけて,温かい濃い目のかけつゆを張り,大葉の粗みじん切りをトッピングしました。とろろに卵白を混ぜ入れてフワッとさせるとろろそばはよく見ますが,卵黄を混ぜた方が元気が出るような感じがしたのです。
 長芋のすりおろしと違い,山芋のすりおろしは粘り気が強く,卵黄やそばつゆを混ぜてもまだまだしっかりとした食感で,そばと共に食べても存在感があり,美味しくいただきました。

 新年1回目の日記につき,新年のお祝いなどを書き記そうと思っていましたが,一日に能登半島で巨大地震が発生し,多くの壊滅的な人的・物的被害や日常を奪われた多くの人々のことが連日マスコミで報道されており,とてもお祝いどころではありません。今後の出来るだけ早い復興や平穏な日常の回復を祈らずにはおられません。
 今年はその後も羽田空港における日航機と海保機の悲惨な衝突や大きな火災などが立て続けに起きていて荒れた1年になるのではないかという不安を感じさせられます。
 蕎麦道楽人としては,「アルモンデそば」のメニューに悩んでいられるような平和な1年であれと祈るばかりです。

 

アルモンデそば(№27)~肉そばの味噌仕立て

 そば打ちを趣味としている小生の家の冷凍庫には,打った日に食べきれなかったそばの冷凍が常に保存されていますが,家人からは何とかせよとの厳命を受けることもしばしばあり,そうなりますと,小生の在宅時の昼食はほとんど冷凍したそばを食することになります。そのため,冷凍手打ちそばを何とか美味しく食べようと,その時に家に「あるもんで」いろいろと手を変え品を変え努力することとなりますが,もちろん冷凍とはいえ手打ちそばですから主役はあくまでそばであり,できるだけそばの風味を生かしつつ,何とか美味しいそばを食すべく考えたそばメニューを「アルモンデそば」のカテゴリーでこのブログに日記風に書いています。

№27 肉そばの味噌仕立て

肉は甘辛く味付けした豚バラ肉,つゆは味噌仕立て,七味を振りました

 本日の「アルモンデそば」は,冷蔵庫に豚バラ肉が少し残っているのを見つけましたので,そのまま豚バラ肉そばにしてもよかったのですが,少し変化を付けたいと思い,以前雑誌などで見たことのある「味噌仕立てのつゆ」で食べることを思いつきました。 

 そばやうどんの麺つゆについては,醤油を使った麺つゆが普及する江戸時代中期までは,味噌から作る汁で食べるのが一般的だったそうで,材料は味噌,鰹節と水で,作り方は要するに煮る(煮詰める)だけですが,「煮貫(にぬき)」と呼ばれていたようです。現代でも濃縮版が市販されているそうです。(「サライjp」の2017.4.16付け記事「江戸っ子は蕎麦もうどんもコレで食べてた!滋味深い江戸の味噌つゆ 『煮貫(にぬき)』」参照)
 余談ですが,大阪などでは,特にある程度上の年齢層では,ゆで卵のことを「煮抜き(にぬき)」ということが少なくありません。「煮貫き」にしろ「煮抜き」にしろ,何かをある程度以上煮上げて作る料理方法を「煮ぬき」と呼んでいたものがそのまま料理名になったのではないかと想像できます。

 さて,豚バラ肉については,先に炒めて甘辛い醤油味にしておきました。
 味噌仕立てのそばつゆですが,江戸時代の「煮貫」をイメージして,濃い目の鰹出汁,酒,味醂,赤みそ,白みそで味噌汁などよりはやや濃い目に作り,最後にすりおろし生姜を入れてアクセントを付けました。つけつゆの場合はここから少し煮詰めるのかもしれませんが,かけつゆにしますので煮詰め作業はほとんど行いませんでした。
 例によって,冷凍手打ちそばを湯掻き軽く締めてから再度温めて器に盛り,肉とねぎを軽く煮たものをのせて,味噌仕立てのつゆをかけ回し,七味唐辛子を振りました。
 醤油はもちろん自家製のそばつゆもかえしも全く使っていない味噌味のそばつゆでしたが,味噌味で体がよく温まり,味噌と鰹節の風味が肉との相性もよく,肉そばを美味しく食べることができました。

 昨日あたりから日中の最高気温が10℃を超え,中途半端に温かく,午後から日課の散歩に出ても軽く汗をかき,帰り道で汗が冷えて寒くなる状況です。お正月まであと数日,29日からは年越しそばを打ったり,つゆを作ったり,それを配ったりで忙しくなります。何とか健康で年を越したいと思います。