sobayanoyutoの蕎麦道楽日記

大好きな蕎麦で遊んでいます

おそば屋さん食べ歩き~江戸情緒香る東京の老舗二店

 蕎麦で遊んでいます。今回は「おそば屋さん食べ歩き」です。
 小生が食べ歩いたおそば屋さんの中のお気に入りです。小生は趣味でそばを打ちますので,どうしてもそばそのものや汁に関心が向かってしまい,天ぷらや鴨などの種物,お酒やアテなどの料理についてはあまり紹介できないかもしれませんがご容赦の程。また,内容はすべて訪問した当時のものであり,現在も変わりないかどうかはその都度確認していませんので悪しからず。

 10月中旬,東京都港区の某施設で開催された片山虎之助先生の「蕎麦のソムリエ講座」なるものに参加してきました。何度目かの参加になるのですが,参加するたびに,日本の食文化としてのそばの世界が広がるのを感じさせられます。小生,一時期は,手打ちそばの打ち方の一つであるいわゆる「江戸流」の技術的要素にこだわってしまい,食文化としてのそばの世界をむしろ狭くしてしまっていたように思います。日本には,江戸期の東京はもちろん,各地にその土地で一番美味しいとされている(「されていた」かもしれませんが。)そばがあり,その背景にはその土地の気候・風土や食文化があります。同講座を宣伝等する気はさらさらありませんが,参加するたびに,それらの日本の食文化としてのそばの世界に,目を開かせてもらっているように思います。片山先生のそば粉や打ち方に対するこだわりも興味深いものがあります。
 今回は,同講座に参加するため東京に行った際に伺った老舗といわれる蕎麦屋さんの中の2軒です。「神田やぶそば」と「更科布屋(芝大門)」です。もっとも,今回の食べ歩きは,せっかく東京に行くのでその機会にいわゆる老舗といわれている蕎麦屋さんに行ってみたいというお上りさん的な動機によるもので,典型的ないわゆる「江戸流」のお店になるのですが,それもそばの食文化のひとつであり興味津々で行ってきました。これからも東京方面に行く機会があれば他の老舗にも行ってみたいと思っています。

 №9 神田やぶそば 

「神田やぶそば」外観,生垣で中がうかがい知れません

 

 いわゆる江戸蕎麦の伝統を継承する藪御三家の一つである「神田やぶそば」です。行ったことのある方やご存知の方も多いと思います。
 当日は,お昼時をやや過ぎた午後1時30分過ぎに,キャリーケースをガラガラ引いて地下鉄丸ノ内線淡路町駅から5分弱歩いて伺いました。そば屋さんの営業時間は,午前11時30分ころから午後2時ころまでと午後4時ころからの2部制が多いのですが,ここは午前11時30分からラストオーダー20時となっていて,遠来の客にはありがたい時間設定です。
 地下鉄の駅から歩いていると,お店らしい所が見えてきましたが,背の高い生垣に囲われており,その中は見えにくいため,通りの角に吊るされたお店の名称入りの街灯様のものがなければ分かりにくいかもしれません。少し回りこみますと,生垣の切れ目に,縦書きで「藪蕎麦」とすべて漢字で書かれた木製看板のようなものが置かれておりそれと知れます。
 お店の敷地内に足を進めますと,まず整理券発券機が目に入ります。そば屋さんの場合は並ぶことも少なくないのですが,お店によっては,ファミレスのように名前を書く紙が置いてあるところはあるものの,発券機が設置されている店は小生としては初めてで,さすが東京の老舗は違うなあと妙なところで感心してしまいました。整理券を発行する際に待ち組数が3組と表示され,店内の広い玄関スペースで待っていますと,10分ほどで番号を呼ばれて中に入りました。
 お店の中は,相当大きなスペースが広がり,木柱や障子が使われ,木のテーブルとイス,小上がりの畳などが,2014年立て替えとは思えないほどもっと古くからある大きなおそば屋さんという雰囲気が感じられ,一気に老舗のおそば屋さんという感覚が増します。お店のHPによれば,1階にはテーブル席74席,小上がり席4卓と記載されていますが,小生が案内されたのはHPに記載のないカウンター席でしたし,テーブル席ももう少し多いように思いました。お客の入りはお昼時分も過ぎているのに満席の状況で,お店のスタッフもきびきびと忙しそうに立ち回っており活気が感じられました。

写真では緑色が分かりにくいのですがしっかりとした薄緑色でした

 席に着くなり,案内してくれた係の方に,メニューも見ずに,まずは「せいろう」一枚をお願いしました。なお,一般的には,「せいろう」は「ざるそば」とそばを盛る器に違いがあるだけでほとんど同じです。このお店のそばは,きれいな淡い緑色をしていることで知られており,また,いわゆる外一(そといち,そば粉10・つなぎ1)で打たれたもので,色だけではなく香りや食感もそばの風味がよく分かるものです。
 「せいろぅ~,いちまいぃ~」という,帳場から奥に注文を通すよく通る声が聞こえます。ほどなく,写真では分かりにくいのですが,美しい薄緑色を呈するそばが黒塗りの長角のそば箱に平らに盛られて運ばれてきました。そばの表面は滑らかでホシは見えませんが,細目でいわゆる角が立っています。2,3本を箸でつまんで口に運びますと,噛んだ時にスッと切れてふわりとそばの香りが感じられます。
 もっとも,小生の乏しい知識によれば,そばの緑色はそばの実の甘皮を挽き込んでいる場合に淡い緑色を呈するもので,新そばのシーズンには分かりやすい緑色になりますが,その後は段々と薄くなっていくものとされています。このお店のそばの緑色は淡いというよりはむしろしっかりとしており,昔はそばの緑芽を,現在はクロレラを練りこんでいると聞いたことがありますが真偽のほどは知りません。
 そばつゆは,これもそば好きにはよく知られた味で,いわゆる辛口の非常に濃いこくのあるものとのことでしたが,そばを麺の三分の一ほどもつけたら十分という代物という知識の下に少し舐めてみますと,醤油感だけではなく甘みも強く,鰹節のコクが感じられましたが,そば猪口に入ってきたつゆも追加用のそば徳利に入っていたつゆもどちらも少量でした。つゆをたっぷりつける関西人の小生にとっては物足りない量かなとも思いましたが,いざ,そばを食べ始めると自然につゆの濃さに見合うつゆのつけ方であるそばの三分の一ほどをつゆにつけてすすり込む食べ方になり,つゆは十分足りる量でした。
 食べ終わるころになると,そば湯が小ぶりの湯桶で提供されましたので,そば猪口に余っていたつゆにそのままそば湯を入れて飲みましたがサラッとしていました。そば湯は釜のゆで汁をそのまま入れる本来のそば湯のタイプだろうと思いました。そばを食べ終わってそば箱の中の笊を見ますと真ん中が盛り上がっており見た目の何らかの工夫があるのだろうと思いました。

カキそばです。上に載っていたカキを2,3個つまんでしまいました。

 「せいろう」を食べ終わるころに,小生の隣の席にやや年配の男性が座り,カキそばを注文されました。「カキそば,美味しそうですね。」と声をかけると「季節のそばで毎年この季節になると食べに来ます。」とのこと。話をしていますと,2013年にお店が焼失する以前から通っているとのことで,建替え以前のお店の様子などについてお話を伺うことができました。話を聞いているうちに,小生も「カキそば」を食べたくなり注文したのが上の写真です。写真を撮る前にのっていた牡蠣を思わず2,3個つまんでしまいましたので,写真に写っている牡蠣が少なく見えますが,具のワカメ(量が多いように思いました。)の下にも隠れており,6~7個入っていました。香りといい出汁といい,牡蠣の風味が感じられ美味しくいただきました。

 (お店のデータ)

・所在地等 東京都千代田神田淡路町2-10 ℡ 03-3251-0287

・営業時間等 11:30~ラストオーダー20:00,定休日 水曜

・席数 1階テーブル席73席,小上がり4卓,2階個室3室(20席) 

・交通 地下鉄丸ノ内線淡路町駅A3出口徒歩約3分,都営新宿線小川町駅A3出口徒歩約3分,JR御茶ノ水聖橋口徒歩約5分,各線神田駅徒歩3~5分など

 

№10 更科布屋(芝大門)

更科布屋の「三色そば」です。菊切りの緑色がよく分かります。

 翌日のお昼に,宿泊したホテルから徒歩圏内にあった「芝大門 更科布屋」に伺いました。更科堀井などの麻布界隈の更科系の有名店との位置関係等についてはよく知りませんが,このお店のHPによれば,創業220余年とのことですからここも老舗中の老舗と言えるのだろうと思います。お店の外観写真を撮り忘れましたが,老舗感たっぷりのそれらしい建物というよりは街に溶け込んでいる日常的に通う普通のおそば屋さんという感じでした。

増上寺があまり写ってませんが右奥の東京タワーとの組み合わせが美しい

増上寺大門です

 お店の営業開始時間の11:00に少し時間がありましので,お店の名前の前に「大門」とある通り,すぐ近くの有名な増上寺とその大門を眺めてから11:10ころにお店に伺ったところ,既にほぼ満席だったのには驚きました。
 ここでは,更科系のお店ということで,まず上の写真の三色そばをお願いしました。お店のHPなどでは,変わりそば2種と更科そばとなっていましたが,この日は変わりそばとして菊切り,それと普通の二八そばに更科そばの三色でした。目では十分楽しみましたが,変わりそば二種を期待していたため少し残念な思いがしました。菊切りは緑色でしたが,菊の葉を練り込んだものとのことで細めのきれいな緑色のそばでした。塩で食べてみようと思いましたが,その時はテーブルには見当たらず,提供されたそばつゆでいただきました。そばつゆは,昨日の「やぶそば」に比べますと,醤油感は柔らかいのですが甘目のつゆでした。食べ終わりころにそば湯が湯桶で提供されましたが,開店間もない時間帯のせいか薄めのそば湯で,「やぶそば」と同様に釜のゆで汁をそのまま使いタイプだろうと思いました。食べている間にも客の出入りが絶えず,活気のあるお店だと思いました。
 (お店のデータ)

・所在地等 東京都港区芝大門1-15-8 ℡ 03-3436-3647

・営業時間等 平日11:00~21:00(土曜~20:00,日・祝日~19:00),定休日なし

・席数 テーブル席56席,座敷個室3室26席,テーブル個室1室10席 

・交通 都営浅草線/大江戸線 大門駅A6出口すぐ,JR浜松町駅北口徒歩約3分