sobayanoyutoの蕎麦道楽日記

大好きな蕎麦で遊んでいます

おそば屋さん食べ歩き(№14)~上野で江戸藪蕎麦の伝統をつなぐ老舗

    蕎麦で遊んでいます。今回は「おそば屋さん食べ歩き」です。
 小生が食べ歩いたおそば屋さんの中のお気に入りです。小生は趣味でそばを打ちますので,どうしてもそばそのものや汁に関心が向かってしまい,天ぷらや鴨などの種物,お酒やアテなどの料理についてはあまり紹介できないかもしれませんがご容赦の程。また,内容はすべて訪問した当時のものであり,現在も変わりないかどうかはその都度確認していませんので悪しからず。

№14 上野藪そば(東京都台東区上野)

上野藪蕎麦の外観です。賑やかな街の一角にあることが分かります。2024.1.16訪問

 今回の「おそば屋さん食べ歩き」は,東京に行った際に伺った老舗といわれるおそばさんの中の1軒で,「上野藪そば」です。前々回の上京時に伺った「№9 神田やぶ蕎麦」と同じく藪系の老舗です。
 いつものことながら,蕎麦道楽人としては,せっかく東京に行くのでその機会にいわゆる老舗といわれているおそばさんに行ってみたいというお上りさん的な動機によりお店を選んでおり,こちらも典型的ないわゆる「江戸流」のお店です。これからも東京方面に行く機会があれば他の老舗にも行ってみたいと思っています。

真ん中の三角形の帽子を被ったアーチ門が「上野御徒町商店街」のものです

 JR線などの上野駅広小路口から出て直ぐの横断歩道を渡り,大きな「上野御徒町商店街」のアーチ門をくぐり,アメ横に通じる道の両側に多くの各種店舗が並び人通りも多いそれほど広くはない通りを1,2分歩くと,角地に濃い藍色の「やぶそば」の暖簾が目に入ります。
 藪蕎麦系の老舗であり,行ったことのある方やご存知の方も多いと思います。お店の成立や屋号に関する諸々は長文を要しますので割愛しますが,そのお店の歴史や屋号などもそばの味に影響する要素であることも否めませんので,極々簡単に触れます。
 「上野藪そば」は,いわゆる「藪蕎麦御三家」としては名前は上がっていませんが,御三家の「神田やぶそば」の前身である「連雀町藪蕎麦」から1892年(明治25年)にのれん分けされたお店で,130年余に渡り伝統を継承しているとのことで,現在は4代目になるそうですが,まぎれもなく「江戸藪そば」の伝統を継承する老舗に違いありません。
 もっとも,建物の外観といい,立地している土地柄といい,どちらかと言えば,老舗感よりも現役感の方が強く,賑やかな街のおそば屋さんとして溶け込んでいるように思いました。

ガラスに囲まれたそば打ち部屋,周りにカウンター席があります。

 伺ったのは,1月中旬,風が強く寒い日で,昼時をやや回った午後1時30分ころでしたが,先客が1組入り口前に寒そうに佇んでいました。それほど待つこともなく先客が招き入れられましたので続いて店内に入り,お店の方に一人である旨を告げますと,カウンター席を案内されました。1階店内はほぼ満席のようでした。
 お店は,内装やテーブルなどに特に老舗感や高級感がたっぷり漂っているというわけではなく,現役感の方が強く感じられました。それほど広いとは言えないフロアに4人掛けテーブル席がバランスよく6台位配置され,さらに朱塗りのカウンター席が6席程度でしょうか,30人以上は入れそうでしたが,後でトイレに行くために2階に上がったところ,1階よりも席数の多そうなフロアが広がっており半個室や小座敷席などもあるようでした。
 驚いたのは上の写真にあるとおり,1階のカウンター席に囲まれたガラス越しのそば打ち部屋です。小生も結構な数のおそば屋さんに伺っていますが,そば打ちスペースを取り囲むようにカウンター席が配置されているお店はあまりありません。
 当日はそばを打っている様子は見られませんでしたが,使い込まれた練り鉢や打ち台などが雰囲気を伝えていました。こんな間近で江戸そばの老舗のそば打ちが見られた人は幸せだろうなと思うと同時に,お店の側もごまかしがきかないわけで,それはそれで大変だろうなとも思いました。

「せいろう」です。自然な薄緑色が美しい。

 カウンター席に座って,メニューを眺めますと,冷たいそばとして,「せいろう」とそのアレンジとして「のりかけ」など4種類ほどが並び,温かいそばとして「かけ」にそのアレンジとして「花巻」など7種類ほどが並んでいました。「きつね」もありましたが,大阪などではそばに揚げですから「たぬき」というところです。さらには,うどん,きしめん,ご飯ものが並び,天ぷら類,各種ヌキ,一品料理や酒肴なども豊富に並んでいました。奥の席ではややお年を召した男性たちがお酒を楽しまれているようでした。老舗でありながら肩の張らない普段遣いのできるお店の雰囲気でした。

「せいろう」です 真ん中がやや高く盛られています

 まずは藪蕎麦の定番「せいろう」をお願いし,同時に写真を撮る許可もいただきました。「せいろ」ではなく「せいろう」と「う」を末尾に付けます。「神田やぶそば」ではスタッフの女性が帳場に注文を通す際に,「せいろう~いちまい~」と語尾を謡うように伸ばしていましたが,このお店ではそこまでではありませんでした。
 5分ほどで「せいろう」が提供されました。薄緑色でやや細切りの見るからに角の立ったそばが,「井桁そばざる」というのでしょうか,上野藪の名前入りの黒光りのする角型のそばざるにやや中高に盛られていました。同じくお店の名前入りの小さめのそば徳利,趣味のいいそば猪口,箸袋などが,大きからず小さからず,濃い茶色の木の角盆にきちんと配置されていました。
 そばは表面がしっりとしてつややかに輝き,ホシはほとんど見えません。真ん中のそばが最後に盛られているのか少しだけ山高になっています。2,3本箸でつまんで口中に啜ってやりますと,強くはありませんがそばの香りが分かります。歯で噛みますとフツリと切れ,歯ぬかりなどは全くなくそばの肌が内頬をかすめて気持ちよく喉に落ちていきます。
 そば徳利に少量入っていた藪蕎麦系の特徴でもある濃い目のそばつゆはやや甘さを感じましたが醤油感と鰹出汁感のバランスが取れているように思われ,そばとの相性はよく美味しくいただきました。「そば湯」は金属製の小さなやかんで提供されましたが,流行りのそば粉を溶いたドロッとしたタイプではなく小生の好むサラッとしたタイプで,そばつゆと合わせてこれも美味しくいただきました。この店のそばはいわゆる二八だそうですが,スタッフは忙しそうに動き回っており,そば粉の産地などは伺いませんでした。

「かき南蛮」です 大ぶりの牡蠣が目を引きます

 さて,次に温かいそばとして何をお願いしようかと悩みましたが,メニューのトップにのっていた「季節限定メニュー かき南ばん」に惹かれてしまいました。おそば屋さんの温かいかけそば用のつゆを味わうためには「かけそば」などの蕎麦以外の具がつゆの味に大きな影響を与えないものがいいのですが,掲載されていた写真の牡蠣の大きさに気持ちが傾き,冬の今しか食べられないからなと言い訳をして「かき南ばん」をお願いしました。
 こちらはやや待ちましたが,提供された「かき南ばん」が上の写真です。牡蠣の大きさは掲載されていた写真のとおり大ぶりで,南蛮(ねぎ)は白ねぎを長めに切って縦割りしたもの,つゆは透明感のあるつゆで醤油感が抑えられており,牡蠣の出汁がよく分かりましたし,つゆもほとんど飲み干してしまいました。そばは「せいろう」のそばと同じものだと思われました。
 「神田やぶそば」でも「かきそば」を食しましたが,「上野藪そば」の方が牡蠣は大ぶりで食べ応えがありました(個数は「神田やぶそば」の方が多かったと思います。)。その他にも,違いとしてはつゆの色味や醤油感の濃さや「南蛮」かどうかという点で,「神田」の方は具としてワカメが入っており,「上野」の方は南蛮(,ねぎ)が入っているところでしょうか。好みの分かれるところでしょうが,小生としては「上野」派です。

 「かき南ばん」のつゆをほとんど飲み干して暖まったところで,次回は,お酒を少し頂きながら,「ヌキ」や一品料理を食してみたいと思いながらお店を後にしました。

 

(お店のデータ)

・所在地等 東京都台東区上野6丁目9−16 ℡ 03-3831-4728

・営業時間等 平日【昼の部】11:30~15:00
         【夜の部】17:30〜21:00

        土日祝 11:30~21:00 土日祝日は通し営業

        定休日 水曜日,第2・4火曜日(早仕舞などはお店のHPを参照)

        

・席数 80席程度かと思います 

・交通 JR 上野駅 上野広小路口  地下鉄 銀座線•日比谷線 上野駅から徒歩3分
    丸井 裏手斜め向かい